企業の活動再開に向けた計画が進むにつれて、投げ売りのような価格で中国製品が世界中に「氾濫」しかねないという懸念が国内工業の間で高まっている。工業部門は4月23日、こうした懸念をパウロ・ゲデス経済大臣に伝えた。
全国工業連合会(CNI)もこの懸念を認識している。中国で大きな在庫を抱えている一方、世界的な需要は低迷中だ。その結果として国際市場では、ブラジル企業がより困難な競争に巻き込まれる見通しだ。CNIのカルロス・エドゥアルド・アビジャオディ産業開発理事は、「アグレッシブなものになる」とこの国際競争を予想、さらに「中国企業は恩典と助成金を受け取ることができるため、同国は市場経済ではない」と指摘した。
ブラジル繊維工業会(Abit)のフェルナンド・ピメンテル会長は、「ブラジルなど諸外国の工業が足踏みする中で中国が回復していることを、我々は懸念している」と話した。
ただしブラジル企業が事業を再開するには、貿易が不可欠だ。これについてCNIのアビジャオディ産業開発理事は、「人々が突然、ショッピングモールに足を運ぶなどということはない」と指摘する。「状況の変化は緩やかで、1か月から2か月は掛かる」という。国内市場で生産につながる流れを生み出すことができなければ、解決策は必然的に輸出になる。
経済活動が低迷する状況下で各国が保護貿易主義的傾向の強い対策を強化する中、市場競争が激化することになる。このような傾向を、国際機関も憂慮している。そうした事情から世界銀行がこのほど、ブラジル政府が新型コロナウイルス(COVID-19)対策関連製品の輸入を容易にしたと称賛したばかりである。
パンデミック危機からの回復期にブラジル企業が抱えるもうひとつの問題は、アメリカと中国が合意済みの第1段階合意の影響で、対中貿易の一部をブラジルが失いかねないことだ。もっとも、アビジャオディ産業開発理事はパンデミックの終結後にこの合意がどう扱われるかは明確になっていないと認める。だが、この合意内容を遵守することは、それが部分的なものであったとしてもブラジルが影響を受ける可能性があるのだ。
1月に締結されたこの合意は、貿易面では中国によるアメリカ製品の輸入額が2,000億ドル増加することを前提にしている。アビジャオディ産業開発理事は、「多くの製品がブラジルの輸出バスケットとバッティングすることになる」と認識している。米中合意が基準とするのは、2017年の中国の輸入額だ。2021年までにこの合意で定めた輸入目標額を達成する予定である。
CNIの研究によると、合意対象で中国が2017年に輸入した製品でブラジルが占めた比重は3%だった。だが、これらの製品の輸出額は323億ドルで、ブラジルの対中輸出の68.1%を占めた。
ブラジルは、米中合意の対象となる農産物の20%を中国に供給しており、その主要品目は大豆だ。2017年に大豆の輸出額は203億ドルを記録した。また石油に代表されるエネルギーは、輸入の4%を占めた。
連邦政府経済スタッフは、生産活動を早々に再開することで中国が、国際市場の主だった競合国よりも有利な立場を確保できるかどうかを判断するのは時期尚早だとコメントした。連邦政府の見解に基づくと、生産チェーンにおける投入財の主要サプライ国として中国を置き換えるプロセスが加速する可能性があるためだ。東南アジア諸国はすでに、低コストの生産拠点として中国を置き換え始めている。
この事情についてアビジャオディ産業開発理事は、「それはブラジルにとっても好機だ」と断言する。新しいグローバル・サプライチェーンの構築で国内工業は、より有利な立場にあることをアピールできる。「金属加工業界は、コンポーネントの製造も可能だ」と、同理事は一連を示した。
だが、この新しいポジションを確保し新規投資を呼び込むためにブラジルは、イメージを改善する必要があるとアビジャオディ産業開発理事は付け加えた。そして環境問題への取り組みと様々な改革のアジェンダが棚上げされている点をその例として指摘した。「成長の機会を提供し貿易を拡大するには、まずは我が家を修繕する必要がある」という。(2020年4月27日付けバロール紙)