ヨーロッパの人々が批判ののろしを上げている。ブラジルが、保護貿易主義を導入し始めた! これは、リセッションの瀬戸際に直面してEU諸国が採用を拡大する、制約を多く盛り込んだ財政政策を大統領が批判したことへの反論だ。その欧州のリセッションは、いよいよリスクが高まり、今ではIMFですら、蓋然性が高いと認めている。
ヨーロッパの人々の反発は、ごもっとも。2011年の最初の8カ月間、EUの対ブラジル輸出は、前年同期と比較して28.2%増加したのだから。彼らは302億米ドルをブラジルに輸出しており、これは、ブラジルの総輸入高の21.2%を占める。EU圏は、米国にとって代わり、我々の国ブラジルにとっては第2位の輸入元になっている。ブラジルへの輸出で彼等を上回っているのはアジア、つまりは中国と周辺国だけという状態。
しかし、ブラジルは貿易収支で黒字を計上しているのだ! それが議論の発端。1―8月期にブラジルの貿易収支黒字は51億5,000万ドルを計上しており、それは、22億8,000万ドルを計上した前年同期のほぼ2倍。経済成長の減速はあっても、ブラジルはヨーロッパに対して、輸入する以上に輸出している。このため、国内産業を「保護する」などとは、口が裂けても言えないわけだ。ところで、ブラジルとEU間の貿易に関するデータの分析結果が、今週、開発商工省により発表されたが、これを見ると実はそれほど単純な話ではないことが分かる。むしろ、現実は違う。ヨーロッパが依然として多額の輸入を行っていることは間違いないが、それは半製品を含むコモディティーであって、ブラジルのEU向け輸出全体の66.6%を占める。一方、ブラジルがEUから輸入する99.7%-というよりもほぼ100%だ!-は、工業製品が占める。
彼らが原材料を輸入して完成品をブラジルに輸出するのは間違ったことだろうか? もちろん間違っていはいない。間違っているのは、むしろ輸出に偏っている我々のほうだ。原材料はブラジルの輸出の少なくとも63.6%を占める。
一方で我々ブラジルはこの輸出で経済危機を乗り越えた! コモディティー価格が高止まりした状態のため、輸出売り上げを上積みすることが可能になったのだ。しかしこの状況がずっと続くと信じたりするのは無謀だ。というのも、コモディティー相場は依然として高値ではあるが9月には値下がりしている。エコノミック・インテリジェンス・ユニット(EIU)のスタッフが毎週公表する経過観察報告でも、この傾向が確認された。例えば農業コモディティーの相場は11.4%値上がりしたが、9月には10.7%という大きな下落を記録した。ナフサや各種金属を含めれた工業品は、11.2%の値下がり。これらの業界の企業各社は、こうした値下がり傾向は来年も続くと予想する。
つまり、転換期なわけだ。どのようにかって? 現在の印象としては、政府にはたった1つの判断しか下していない。つまり、市場の保護。大統領はすでに貿易面では、短期的な結果を引き出す、二カ国間合意による計画的な対策を採用しているが、これらはいずれにせよ、財務省がより意欲的な提案を策定しているものの政府内部で具体化するためには障害が残っており、先行きは不透明。
私が最有力視するのは、落ち込まないとしても停滞する国内工業に対してインセンティブを与えるという緊迫性を、コモディティー輸出の成果が奪っていくという状況になること。
エスタード紙ジュネーブ特派員のジャミール・シャデが、政府がドーハ開発アジェンダにとらわれない新たな輸出戦略を検討中と伝えた。もっとも、ドーハはブラジルだけが、世間知らずで頑固にもその成果を信じていただけで、実際のところ、はるか昔に死んだものだ。WTOが主張する貿易の自由化という夢は、そもそも構想される前に死んでいた。政府が自国で策定した貿易規定を支持するのは当然のことであるが、それはあくまで最初の1歩であり、この規定は、まだ存在せずようやく発表される貿易計画とは別物。
世界経済は危機に瀕しており、もはや貿易の自由化など誰も信じていない。ブラジルは、この新しい世界の枠組みに最初の一歩を踏み入れた。皆わが身を守るのみだ。オバマ大統領は米国市場を保護して輸出を拡大するために「タスクフォース」を組織化しており、すでに一部であるが成果も出ている。むしろ、さらにアグレッシブにしていくだろう。なぜなら米国の貿易赤字は依然として7,060億ドルもあるのだから。
アルベルト・タメール (2011年10月6日付けエスタード紙)