経済分野で次々と下される政府の判断の決定プロセスには、何か本質的に誤ったものがある。対外的な経済政策のケースでは、とりわけ貿易政策で、驚くべきプリミティブさを発揮している。
このほど30パーセントポイント(※原文は30%)引き上げられた自動車向けの工業製品税(IPI)課税率は、この珍妙な判断の好例だ。輸入車の増加を抑制するため、そもそも生産段階の現地調達比率とブラジル国内生産プロセスのステップアップとして求められる諸条件を達成不可能な輸入車に対して、輸入関税とは無関係な差別的な課税を行うために法律が定められた。
世界貿易機関(WTO)の視点から見れば、この新法は、少なくとも2つの観点から規定に抵触するため、不適切である。それは、輸入品と国産品に対する課税を差別してはいけないこと、そして、現地調達比率に応じて助成することが禁じられていることだ。国産品を優遇しているのは明白だ。WTOでは、互いの譲歩も含めた結果としての、輸入関税の上限のリストが登録されている。単に輸入品というだけで国内の税制が差別的な形で適用されることが許されるなら、それは、どのような意味を持つだろうか?
法律上の問題に加えて、経済的な側面も検討しよう。政府は自動車メーカーが抱える在庫が増加し工場で集団休暇に入ったことへの懸念を表明した。しかし、国内自動車製造会社協会(Anfavea)のデータによると、1月から8月の生産は、前年同期と比較して依然として4.4%も伸びているのだ。2002年と2010年まで、平均では年間9.3%も生産が伸びている。これでは、工業部門が危機に直面していると主張するのは難しい。なぜ、自動車産業を優遇するのだろうか? こうした優遇は、自動車メーカーと自動車部品メーカー、金属労組の声高な大合唱をベースに、業界が国から目をかけてもらうことができる能力、つまり「特別な便宜供与」に対する比重が強いからに他ならない。このツケは、輸入車であろうとなかろうと、高級車を購入する消費者が払うことになる。Anfaveaのミクロ経済学の中だけで、この政策が国産車の価格に変化をもたらさないと主張されている。一方、出席したジャーナリストの嘲笑を受けながらギド・マンテガ財務大臣はワシントンで、この政策は保護貿易主義なのではないと強調する…。いや、この問題は、政府による「特別な便宜供与」として認識されるべきエピソードだ。
技術革新の奨励は、経済政策として望ましい目的だ。助成を通じた技術開発の促進にも、WTOに認められた、適切で効率的な手法が存在する。それがためにBNDESには、国内の最大手を選ぶという不適切な基準を排除し、助成としてクレジットを分配するために、技術革新に対して評価を下す必要性がある。こうしてみれば、政府が技術革新を評価して税制上の恩恵を与えるという管理メカニズムについて、様々な疑問がわいてくる。
一部のアナリストは、為替市場で自国の通貨安を誘導し続ける諸外国の政策により引き起こされた状況への対抗手段として講じることが可能な保護政策の提案をブラジルがWTOに提示するまさにその時に、IPIに関する無意味な判断を下したことがブラジルの信用に与える影響について、懸念を表明している。この懸念は称賛に値するものだが、信頼性が欠けるという単純な理由でWTOに対するブラジルの提案が発展することはない。ここで提案されているのは、事前のレートのリミットを協議するのに加えて、相場が逸脱した場合に相殺するための関税の導入を可能にするということだ。
この提案は、缶詰を手にしつつも缶切りを失った難破船の乗組員たちのエピソードを思い起こさせてくれる。この問題を検討するエコノミストたちの話を聞くと、もし缶切りがどこかに1つでもあったなら、という仮定が前提だと分かる。マクロ経済政策の策定に関して現在直面している決定的な課題は、とりわけ中国と米国といった為替相場のメインプレーヤーたちの通貨レートだ。WTOのガバナンスによりこの問題が改善に向かうと考えるのは幻覚。9月30日付けファイナンシャル・タイムズ紙は、ブラジリアン・フェイントと題して、ブラジル政府の試みが、何ら発展性のない時間稼ぎと断じ、ブラジルが政策を撤回してこの問題について考えを深化させることを提案した。すばらしい助言だが、ブラジル政府は次のような問題を抱えている。それは、とりわけ経済分野で、判断能力に限界があることをすでに実証済みということ。
国際的な協議でブラジルが発言者としての信頼性を失う効果と、保護貿易主義が混同されることは、きわめて憂慮すべき問題だ。「ブラジルの保護貿易主義に反対することは先進工業国と大国の主張の代弁だ」という主張を支持する人だけが、受け入れることができる判断だろう。ここで、サミュエル・ジョンソンの言葉を引用しよう。曰く、悪党どもの最後のよりどころは愛国主義である。珍妙な意思決定を正当化しようとして理屈を国旗でくるもうとするのではなく、採用された保護主義で誰が利益を受け取り誰にコストの負担がかかるのかを分析することが肝要だ。それで今まで登場せずにきた役者は、舞台装置あるいは端的にブレーンと呼ばれるロビーだ。
マルセーロ・デ・パイヴァ・アブレウ ケンブリッジ大学経済学博士号取得、PUC-RIO大学教授 (2011年10月1日付けエスタード紙)