新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックがブラジル経済に与える影響を緩和しようという試みに伴って、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字は数1,000億レアル規模で拡大、結果として政府総債務残高も急激に膨張する可能性がある。こうした状況を踏まえて複数のアナリストが、ブラジルが返済不能な負債の沼へ足を踏み入れるのを回避するための中長期的な取り組みについて透明性をより高めて政府が説明する必要が強まっていると指摘する。
複数の予測で、政府総債務残高が2020年にGDP比80%を突破するのみならず90%を記録すると予想している。2019年の水準は、76.8%だった。
テンデンシアス・コンスルトリアの暫定予測は、2020年に基礎的財政収支がGDP比4.6%に相当する3,258億レアルの赤字というもの。同社のエコノミスト、ファビオ・クライン氏は、「過去最大の赤字だ」という。なお、1,240億レアルの赤字という中央政府(国庫管理局と中央銀行、社会保障院)の基礎的財政収支の目標額は、COVID-19への対策を優先するため破棄された。
テンデンシアスの試算によると、政府総債務残高は、2020年にGDP比83%になる。パンデミックが発生する以前、同社は、政府総債務残高が減少し始める前の2、3年にわたってGDP比77%前後で推移する予想していた。
またパンデミックによる社会・経済的な危機が終息した後、経済活動の低迷により税収は緩やかに回復すると予想。この場合、2021年にGDPは+3.6%の成長とテンデンシアスは予測する。「大きな成長のように思えるが、それは、前年が大きなマイナス成長だったことによる」とクライン氏は言う。
このため政府には、国家財政の運用が厳しくなるカントリー・リスクの悪化を回避するため、短期と中期、そして長期の計画について明確に市場に伝える必要があるという。同氏は、「各種の改革に対してコミットメントがあるのかどうか、それを知ることが重要になる」と指摘する。クライン氏によると政府は、国庫管理局のマンスエット・アルメイダ局長には「才覚」があるにしても、コミュニケーション分野で重大な失敗を犯しているという。
テンデンシアスが想定する3,458億レアルの基礎的財政収支の赤字の内、1,937億レアルがCOVID-19対策に関連した支出によるものである。残りは、歳入の減少に伴うものという。テンデンシアスは、2020年のGDP成長率を-1.4%と予想している。(2020年3月31日付けバロール紙)