ミッシェル・テーメル大統領と盟主のアルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領は、世界経済の中にメルコスールを組み込む約束を反故にしている。2003年に米州自由貿易圏(FTAA、ポ略語はAlca)設立交渉が頓挫して以来の自由貿易協定締結の可能性があったが、さらにもう1年メルコスールとヨーロッパ連合との自由貿易協定締結は先送りされる。
ブラジル政府並びにアルゼンチン政府代表団は、昨年12月にアルゼンチンのブエノス・アイレスで開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議もしくはその後のブラジリアで開催されたメルコスール会合でのヨーロッパ連合との自由貿易協定締結の可能性があった。しかしメルコスールとヨーロッパ連合(EU)との間で自由貿易協定締結の合意が得られず、2019年もしくはそれ以降の締結の可能性が出てきている。
2016年末にお互いが譲歩し合って自由貿易協定の締結寸前まで達したが、最後の障害を乗り越えることができなかった。ヨーロッパ連合側は、ドイツのメルケル首相は、フランス政府の農業政策面での頑な保護貿易政策に譲渡して、南米側の要望に応えることができなかった。また今年上半期の間、ヨーロッパ連合の議長国がブルガリア政府になることもメルコスールとの自由貿易協定締結における農業政策面から更に抵抗が大きくなると危惧されている。
2003年のブラジルの労働者党(PT)政権開始からブラジル並びにメルコスールは自由貿易協定から遠ざかり、労働者党(PT)主義並びにアルゼンチンのキルチネル主義は、先進国と発展途上国との貿易障壁を取除くことを目的として、世界貿易機関(WTO)が主催する多角的貿易交渉のドーハラウンドに対して排他的な主張をしていた。2001年から開始されたドーハラウンドは、世界貿易機関(WTO)の主要国や僅かな支持国を除いて弱体化していき、二国間の貿易協定や地域ブロック化が進んだ。
メルコスールは長年に亘って周辺国や僅かな国との貿易協定締結に留まり、イタマラチー宮並びにキルチネル主義では、イスラエル並びにパレスチナ、エジプトとの自由貿易協定の締結、インド並びに南アフリカとの特恵貿易協定締結に留まっている。
メルコスールは、米国との米州自由貿易圏との交渉中止でラテンアメリカ諸国との二国間貿易協定に舵を切り、南米ではチリとの自由貿易協定締結、コロンビア並びにメキシコ、ペル、チリは太平洋同盟を締結してラテンアメリカ地域での自由貿易拡大を行っている。
またメキシコは、北米自由貿易協定(NAFTA)のメンバー以外にもヨーロッパ諸国との自由貿易協定を模索している。メルコスールは域内諸国との調整に苦慮して新たな交渉が難航、また問題の多いチャーベス主義のヴェネズエラの加盟を停止している。
昨年ブラジル並びにアルゼンチンはカナダ並びにオーストラリア、ニュージーランドとの自由貿易協定を試みている。自由貿易協定締結なしでは、経済発展並びに持続的成長は不可能であるとマルコス・ジョージ・デ・リマ通商開発相代行は指摘している。しかしブラジルやメルコスール加盟国は、続けて世界でも最も閉鎖された経済であり、選挙キャンペーンでも経済開放政策を議論するのは容易ではない。(2018年1月15日付けエスタード紙コラム欄から抜粋)