連邦政府は、失業率対策として、労働者支援基金(FAT)から給与額の15%を補填することを想定した雇用対策をまとめた。
工業部門などを中心に解雇の動きが拡大していることで、連邦政府の専門部会は、労働者の労働時間と給与を縮小することを中心とした雇用対策を6月末までにまとめる。エスタード紙が入手した構想では、労働時間の短縮規模は30%で、同じ比率で給与も削減する。ただし労働者に対しては、労働者支援基金(FAT)から給与額の15%を補填する。
このため、雇用者にとっては、30%のコスト削減効果が得られる。他方、労働者にとっては、失業保険と一時金の支払いに資金を充てるFATから15%補填されるため、賃金そのものは15%減となる。
雇用保護計画(PPE: Plano de Proteção ao Emprego)と名付けられたこの提案に対して、連邦政府関係者、とりわけ経済スタッフの反応は好意的という。この提案に関する議論は、大統領府執務室官房質が労働省の技術支援を受けて推進している。失業率は4月に過去4年で最高水準まで上昇しており、連邦政府はこの対策を、失業率の上昇を阻止する切り札と位置付けている。なお、大企業は連邦政府に対して、50%の削減(給与はFATが25%を補填)するよう要請している。
ドイツの事例
一連の討論のきっかけは、3年前、当時のABC金属労組が連邦政府に具申したことに始まる。連邦政府と労組の代表者らがこの問題について知見を広げるため、ドイツを訪問している。
ドイツでは、労使が、特定の条件と期間を設けて労使が労働時間と給与の引き下げで合意し、不況下での倒産あるいは解雇の回避を図っている。この制度は2008年の経済危機対策として広く活用されたが、実際には、60年代から80年代に、既に活用されてきた。
労働時間の短縮と給与の削減を導入するには、労使の合意が必要である。このような場合を除けば、憲法では労働者の権利のはく奪は認められていない。また今回の計画では、FATによる補填の上限を1,385.91レアル(失業率でFATが支払う最高額)とする。この他には、引き下げられた労働者の給与が最低賃金(788レアル)を下回ってはならない。
レイオフ
雇用者と労働者、連邦政府の間には、とりわけ自動車業界を中心に、失業の拡大を回避する制度が重要であるという一致した見解がある。現在、自動車生産台数が落ち込んだ結果、レイオフあるいは集団休暇、有給休暇の対象になっている労働者は約2万5,000人にも達している。自動車業界は、直接・間接を合わせて150万人の雇用を生み出している。
レイオフの対象となった場合、雇用契約は5か月にわたって停止するが、さらに延長することもあり得る。この間、従業員は5か月にわたって失業保険を受け取る。連邦政府が計画しているPPEでは、労働者は引き続き雇用関係を維持し、これに関連した税金や年金、賦課金の納付も継続される。
連邦政府にとっては、税収が見込める上に失業保険の支出を抑えることができ、労働者の給与の一部を補填する以上のアドバンテージがある。
国会への圧力
労働法の弾力的な適用について連邦政府は、即効性のある暫定令(MP)を通じて実施する方針だ。全国自動車工業会(Anfavea)のルイス・モアン会長は、MPが承認され、その後、恒久的に法律を改定するよう、メーカーと労組が一丸となって国会に圧力をかけると話す。
統一労組(CUT)の傘下にある全国金属労組連合会のパウロ・カイレス委員長も、「労働者の尊厳を傷つける解雇を回避するための、予防的措置だ」と指摘する。同委員長はさらに、「火災を消し止める消防士の救援活動のようなタイプの対策だ。現在のような、工業部門が火だるまになっている状況にだけは有効だ」と付け加えた。同連合会は、国内の業界労組85団体で構成される。組合員数は約100万人だ。ロルサ・シンジカルのミゲル・トーレス委員長も、整理解雇を実施した企業が勤続期間保障基金(FGTS)に対して支払う10%の罰金のような資金を補填の資金源にするよう求めてはいるが、この対策を支持する。同委員長によると、FGTSの罰金を原資にするなら、厳しい不況に見舞われている中で、年間30億レアルの資金が確保できるという。
中央労組としては国内で3番目の規模を持つUGTのリカルド・パタ委員長は、連邦政府の対策について、自動車業界の大量解雇の影響が国内のGDPに70%の比重を持つ商業とサービス業に波及するのを避けるものと受け止めているとコメントした。(2015年6月18日付けエスタード紙)