次期事務局長に選出されて9月1日に就任するブラジルのロベルト・アゼベドWTO担当大使は、過去数カ月に亘って取りざたされている通貨の歪曲を世界貿易機関(WTO)で取り上げるには課題が大きすぎると説明、また米国並びに中国の通貨問題について「世界貿易の新しい動き」のセミナーで、「通貨戦争」とはみなしていないと説明している。
貿易問題を話し合う時に通貨の不均衡が主要な問題になるが、それぞれの通貨の価値は金本位制が放棄された後は、その国の税制や金融政策が絡んでいるために、WTOが介入する問題ではないと説明している。
アゼベード氏は米国の量的金融緩和政策(Quantitative easing)並びに中国の通貨コントロールを通貨戦争と呼ぶことを避けているにも関わらず、世界貿易に影響を与えているが、変動相場制ではそれぞれの政府の経済政策で許容レンジに収まっており、関税をかけて輸入制限する保護貿易主義よりも優れていると説明している。
アゼベード氏は通貨の歪曲問題には触れないが、ブラジルのような国にとってWTOの貿易政策は重要であり、また今年12月にインドネシアのバリ島で開かれるWTOの大臣級会合に向けて議論を活発化し、利害対立が激しい加盟国間に新しい関係が構築されると見込んでいる。
過去数カ月間に亘ってドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)が難航していることについて、世界各国はドーハ・ラウンドを無視し、ヨーロッパとアメリカの自由貿易交渉やアジア太平洋地域の自由貿易への取り組みのように二国間や地域の貿易協定を追求するようになったが、再度、多角的貿易交渉を議論の場にあげると説明している。
二国間の貿易協定は自然であり、いつでも締結されているが、多角的貿易交渉は多くの国の思惑が絡んでいるため難航していることが問題であるとアゼベード氏は説明している。
企業経営者は多角的貿易交渉を支持
ドーハ・ラウンド復活オプションはあるにしてもブラジルの現在の貿易政策は継続されると予想されているが、ヴァロール紙が主催した「世界貿易の新しい動き」セミナーに参加したロベルト・アゼベド次期事務局長は、ブラジルはメルコスールに縛られて二国間貿易交渉ができないが、二国間交渉を行う時期に来ていると説明、オデブレヒトグループのマルセロ・オデブレヒト社長は、9月1日に就任するアゼベード次期事務局長によるWTOの新しい動きに期待しているが、かたくなにドーハ・ラウンド再開をする必要はないが、多角的貿易交渉は二国間貿易交渉の代りに行う必要があり、多くの国が参加する新しい交渉が必要であると述べている。
ブラジル・イスラエル商工会議所のジェネラル・マネージャーでサンパウロ大学のパウロ・フェルドマン教授は、ブラジルは多角的貿易交渉を継続しなければならないが、2007年にルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シスバ大統領の音頭で締結されたメルコスールとイスラエルの貿易協定は、両国の企業経営者に知られていない上に、ブラジルの自動車や航空機は輸出されて当然であるにも関わらず、今まで何も実績がないと説明している。
コザン社のルーベンス・オメット社長は、ロベルト・アゼベド次期事務局長の就任で多角的貿易交渉を進めると予想しているが、ブラジルにとって二国間貿易交渉は交渉が簡単で締結しやすいために、オプションとして活用すればよいと説明している。
オメット社長は、メルコスールはブラジルにとって足枷になっているために、加盟国の二国間貿易交渉を許容しなければならないと説明、ドイツ資本のBayer社のChristian Lohbauer社長は、どんな自由貿易協定も多国籍企業の同社にとってインセンティブとなり、本社では米国とヨーロッパ連合との自由貿易協定を支持、多角的貿易交渉にしても二国間貿易交渉にしても、明確に協定内容を決定する必要があると述べている。(2013年6月21日、22日、23日付けヴァロール紙)