2014年選挙の政見放送枠の構築の前哨戦として、ジウマ・ロウセフ大統領が、7日、サンパウロ州政府のギリェルメ・アフィフ・ドミンゴス副知事(PSD:社会民主党)を小・零細企業担当局長に任命した。大臣扱いの局長で、ジウマ政権としては39人目の大臣。今回の人事は労働者党(PT)にとって、ジルベルト・カサビ元市長が旗揚げしたPSDを連立与党に取り込み、同党が権利を保有する1分39秒の政見放送枠をもらい受けるのが狙い。アフィフ副知事の局長就任は9日。
アフィフ副知事の局長就任を受け、ブラジル民主社会党(PSDB)所属のジェラルド・アルキミン知事は極めて困難なかじ取りを強いられることになる。アフィフ副知事は、野党PSDBが州政を担当するサンパウロ州の副知事というだけでなく、国政では与党PTの大臣を兼任することになる。 民主党(DEM)を離党してPSDを結党したアフィフ副知事とカサビ氏は、2012年の統一市長市議会議員選挙までPSDBと連立してきたが、ここへきて与党PT陣営に軸足を移すことになる。アフィフ副知事は元自由戦線党(PFL)所属で、 パウロ・マルフ氏やセルソ・ピッタ氏と強い関係を構築してきた。
アルキミン州知事は、2011年に経済開発局長を更迭して以降、副知事との関係が冷え込んでいた。 当時、この人事はアフィフ副知事がDEMからPSDに移籍したことに対する報復と受け止められた。 今回のアフィフ副知事の大臣任命は、2014年の選挙でカサビ氏が、アルキミン知事の対立候補として存在感を増すことと併せ、PSDB内部で大きな反発を招いている。
サンパウロ州政庁トップの間では副知事とのいさかいは求めておらず、兼任問題も司法の場で闘争する動きはない。 ただし、あくまでも可能性として、アフィフ副知事の弾劾プロセスは、アルキミン州知事と連立する関係者が主張している。ただ目下のところ、州知事自身は、そうした対決姿勢をあおることは希望していない。 同様にPT党内でも、信条が風見鶏のような副知事の過去の政治活動には言及しないように対応することを申しわたしている。
副知事は7日に発表した声明の中で、ジウマ大統領の招聘を栄誉とし、また、アルキミン州知事にも謝意を表するとコメント。さらに、「サンパウロ州政府と連邦政府の協力に向けて努力する所存」と発言した。
地方での遊説活動
大統領府が大臣任命を公式に発表する数時間前、アフィフ副知事は、サンパウロ商業協会(ACSP)役員就任式典において、PT関係者がアルキミン州知事と演壇に並ぶ中で、ジウマ大統領を称賛する一幕も。 アフィフ副知事が大臣就任を受け入れたことで、PTにとっては、これまで緊密な関係構築を苦手としてきたサンパウロ州の財界と大統領の対話のチャネルを開くことになる。
この式典後、ブラジリアに到着するまでの間にジウマ大統領は、アフィフ副知事とミシェル・テーメル副大統領、カサビ氏と、指名について最終的な話し合いを持った。この協議でアフィフ副知事は、大統領に対してサンパウロ州副知事に留まることを伝えている。
ジウマ大統領の政治的な打算は大きく、国会におけるPSDの議席数に強い期待を寄せる。同党は、下院で48議席、上院で2議席を確保しており、連邦政府の息のかかった法案を通過させるのに重要な数字である。
ジウマ大統領の報道担当者によると、アフィフ副知事の人選は、中産階級と強いつながりのある生産部門と大統領府の接点を確保しさらに伸ばすという明確な目的のもと、慎重に進められた。アフィフ副知事を取り込んだことで、連邦政府は、大きな世論を連鎖的に形成すると位置づけられるこの所得層の有権者を対象にした計画を策定、立ち上げることに期待している。
アフィフ副知事の連邦政府入りは、ジウマ大統領の再選に向けたロードマップの新たな1歩となる。 同様に、ジウマ政権発足当時にカルロス・ルピ労働大臣やアルフレッド・ナシメント運輸大臣の更迭を伴った政府内の「粛清」で離れていったグループをもう1度取り込むことも狙う。2014年の選挙キャンペーンに向けて大統領は、政権内部におけるブラジル民主運動党(PMDB)の強化も図っており、同党の要請に基づき農牧食料供給省と民間航空局の人事を進めている。ただ、ジウマ大統領は以前から、政府にPSDを取り込むことに強い意欲を示していた。カサビ氏は今回の人事について、大統領の個人的判断によるものだとコメントしている。
小・零細企業局は、省と同等の権限を持ち、零細企業事業の促進政策の策定を支援する。開発商工省(MDIC)に与えられてきた小・零細企業に関連した権限は、この新局に移管される。
軌道修正
マリオ・アマート氏の息子で実業家のロジェリオ・アマート氏が商業協会の会長に就任する式典の場で、ジウマ大統領は、「この式典の場を利用して、皆様方1人1人を称えたい。というのも、この1人のブラジル人は、小・零細企業への支援を国家的問題に引き上げたのであり、零細ビジネスの問題がこの国の未来と現在にとって戦略的かつ不可欠であることを私たちに認識させてくれました」と、アフィフ副知事を称賛した。なお、1989年の大統領選挙では、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)会長を務めていたマリオ・アマート氏は、もしルーラ候補が当選すれば80万人の実業家がブラジルから離れるだろうと発言した。PTはこの選挙で、フェルナンド・コーロル・ドゥ・メーロ候補に敗北した。
演壇上では、ジウマ大統領の隣にテーメル副大統領、さらに、サンパウロ市のフェルナンド・アダジ市長(PT)が列席しており、ジェラルド・アルキミン知事はスピーチの中で、アフィフ副知事に対して一切の言及を避けた。 反対に州知事はジウマ大統領が州政府内部の人間を褒めそやすのに耳を貸すことになった。大統領は、副知事が「リーダーシップを備え、主役として」、零細ビジネスを国家的な課題として取り組むために「決定的に重要な役割を果たす」とコメント。 その上で、零細企業通則法とシンプレス・ナシオナル税制、個人零細事業主法の承認でアフィフ副知事が果たした実績に言及した。 アフィフ副知事はカサビ氏とともに、壇上ではなくオーディエンスとして出席、スピーチはなかった。
なお、大臣職を1人増やすことへの批判を受けて、ジウマ大統領は、新局長が「ブラジルにとって不可欠な存在だ」と反論。「この時期を乗り切るために小規模のビジネス問題だけにつきっきりで対処する大臣が必要だ」とコメントした。(2013年5月7日付けエスタード紙)