今年初め7か月間のブラジル企業が海外に擁している自社資産売却によるブラジル国内への資金流入総額は、136億ドルに達して前年同期の24億ドルの6倍に相当する資産売却を進めている。しかし昨年の海外の自社資産売却によるブラジル国内への資金流入総額は64億ドルであった。
ブラジル企業による海外の資産売却の加速要因として、ブラジル経済の予想を下回る景気低迷で海外の自社資産維持の見直し、レアル通貨に対する急激なドル高の為替、トランプ大統領による保護貿易台頭による新興国の為替下落への影響が挙げられる。
2018年上半期には、ブラジルを代表する鉄鋼メーカーのナショナル製鉄所(CNS)やゲルダウ社が米国やチリに所有していた持ち株式などの海外資産売却を積極的に進めている。
今年4月~7月の4か月間のブラジル企業による海外の資産売却は、今年初め7か月間の90%に相当する121億ドルに達しており、ピークは6月の56億ドルを記録している。
また今年初め7か月間のブラジル企業による海外資産売却月間平均は、過去4年間の月間平均の7億5,000万ドルの4倍に相当する30億ドルを記録、多くの企業はドル高の為替による売却で、国内の高金利の負債軽減を進めていると元商工開発省長官のWelber Barral氏は説明している。
過去6年間のブラジル企業による海外資産売却の推移では、2013年1月~7月は17億1,300万ドル、2014年は14億4,100万ドル、ドル高の為替が顕著であった2015年は48億600万ドル、2016年22億ドル、2017年24億3,400万ドル、ドル高の今年は136億6,300万ドルに達している一方で、海外での資産購入は73億ドルに達している。
2年半以上の経済リセッションの影響で、高炉の操業停止に見舞われていたブラジルの鉄鋼メーカーは、ゲルダウ社以外にウジミナス社やナショナル製鉄所(CSN)も負債圧縮で資産売却を余儀なくされている。
今年上半期にナショナル製鉄所(CSN)は、米国資本Steel Dynamics社に対して、自動車生産向け圧延鋼生産工場を譲渡。ゲルダウ社は、負債縮小並びに収益率の高いコア事業に投資を集約するために、過去4年間に総額65億レアルに達する資産売却で負債を大幅に軽減しており、また年末までに米国内の棒鋼生産工場をCommercial Metals Company(CMC)に6億ドルで売却する。(2018年9月5日付けヴァロール紙)