米国の格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は、昨日11日にブラジルの長期ソブリン格付けを今年10月の大統領選や年金制度改革を巡り不透明感が高まっていることが背景として、「BB」から「BBマイナス」に引き下げた。しかし格付け見通しは「ネガティブ」から「安定的」として、短期間の再度の格下げの可能性を否定している。
財政赤字削減に不可欠な年金制度改革法案は、昨年末までの国会での採決を予定していたにも関わらず、国会での承認を得るのに充分な支持が集まらず、年金制度改革法案の採決が今年2月19日に延期された。
しかし今年は10月の地方統一選挙を控えて与野党間の政治駆け引きや国会での本会議期間の短縮などの要因から、年金制度改革法案の可決の可能性が一層低くなると示唆されている。
財務省では、昨年11月の新労働法施行に続いて、社会保障制度改革や税制改革を引き続き推し進めるとの声明を発表して、S&Pによる「BBマイナス」への格下げは、こうした改革を早期に実現する必要性を示すものだと指摘している。
格付け会社S&Pを除いた3大格付け会社のムーディーズ社は「Ba2」、並びにフィッチ社も投資適格級の2段階下の「BB」にそれぞれ据置いている。
連邦政府は、昨年11月中の年金制度改革法案採決を目指して、連立与党間での政治交渉や調整が続けていたにも関わらず、世界3大格付会社の一つのS&Pは、年金制度改革が遅れれば、ブラジルの長期ソブリン債の格下げの可能性が発生すると警告する文書を送っていた経緯があった。
S&Pは、2008年にムーディーズやフィッチより一足早くブラジルを投資適格級に格上げし、また2015年9月には、ムーディーズやフィッチより一足早くブラジル国債の格付を「投資不適格級」に落としていた。
S&Pによるブラジルの長期ソブリンの格付け推移として、2008年4月に「BB+」から「BBB-」に格上げ、2011年11月に「BBB-」から「BBB」に更に格上げしていた。
しかし2014年3月には「BBB」から「BBB-」に格下げ、2015年9月に「BBB-」から「BB+」に格下げ、2016年2月に「BB+」から「BB」に格下げ、そして今回2018年1月11日に「BB」から「BB-」に格下げしている。
今回のS&Pによるブラジルの長期ソブリンの「BB」から「BB-」に格下げでもアルゼンチンの格付け「B+」よりも1ランク上位にあるが、ロシアの「BB+」よりも2ランク下、インドの「BBB-」よりも3ランク下となっている。(2018年1月12日付けエスタード紙)