セルソ・ミンギ
影響力を持ったエコノミストの間で、国際経済危機からの脱出には良質のインフレーションを処方箋にする必要があるという意見が広がっている。2008年ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンも、連邦準備制度理事会(米国の中央銀行)と欧州中央銀行に対して、より強い対策 ― 実際のところは通貨の発行拡大 ― を求める人たちの1人だ。
その提案は理にかなってはいるが、問題も生じさせる。通貨発行量の増加 ― したがって結果的にはインフレーション ― は、負債の縮小に対してアドバンテージをもたらすだろう。米国とユーロ圏の大多数の国をはじめとする、国庫が破たんの瀬戸際にある国々に対しては、過度の負債を抱えた家庭同様、一定の救済につながるといえる。
税金というものは、その大部分がそうなのだが価格に対して課されるので、インフレーションが高進すれば(言い換えれば価格が上昇すれば)、同様に税収も拡大する。こうして、各国政府が同一の公務員給与を支払い、同一の年金支給額を支給し、雇用が不足する地域でも同一の失業保険が給付されるという前提に立てば、公的財政の改善に貢献する。
これは、インフレーションの高進によってもたらされるはずだった別のアドバンテージにも係わる。インフレの上昇を受けて、切り下げることのできる自国通貨が存在しないユーロ圏では通貨切り下げができないことで、あるタスクを実行することになる。それは、生産コストの削減のための実質的な所得の引き下げだ。
ここで少し説明しよう。一般にコストが上昇して生産部門が競争力を失う時、経済は、給与減少、失業率増加という調整状態になる。これに対して経済政策としてより適切な手段は、賃金と価格の引き下げではなく、通貨の切り下げだ。外貨建ての価格が、現地通貨建てで値上がりするということ。しかしそれが機能するのは独自通貨がある場合だけなので、ユーロ圏においては所得と給与、年金を引き下げるということが唯一の策となり、犠牲を払って痛みを伴う改革をもって実行するしかない。年間1%から2%という現在よりも大幅なインフレーションも、消費者の購買力を低下させるという点で類似の効果をもたらす。
別の効果も期待できる。マイナス金利を引き起こして金融アプリケーションの収益を減らし、なおかつ結果的にはインフレーションが消費を刺激し、そうして、生産活動が回復する。
しかしそれは、ハイリスクのゲームになる。経済政策の選択肢として誘発されたインフレーション・プロセスは、民間の貯蓄を枯渇させ、その結果として投資に打撃を与える。
マイナス金利も同様に、年金ファンドの資産と保険会社の技術的準備金の内容を悪化させる。その後、年金ファンドは、予想された年金を支給する技術的条件を満たすことができなくなる。保険会社は、保険契約で保証された損失を補償できなくなる。
結局のところ、インフレーション・プロセスの導入は比較的容易なのだ。難しいのは、通貨流通の小川が大河となり、さらには海のように氾濫するのを阻止することだ。経済史の中でハイパーインフレの事例は幾らでも見いだすことができ、そのいずれもが痛ましく、政治的影響が色濃いものである。(2012年5月12日付エスタード紙)
インフレ指数(過去12か月の数字)
南アフリカ 6.0%
オーストリア 2.4%
ドイツ 2.0%
ブラジル 5.1%
カナダ 1.9%
中国 3.6%
韓国 2.5%
スペイン 1.9%
アメリカ 2.7%
フランス 2.3%
ギリシャ 1.7%
オランダ 2.5%
インド 9.5%
アイルランド 2.3%
イタリア 3.3%
日本 0.5%
ポルトガル 3.1%
イギリス 3.5%
ロシア 3.7%
スイス -1.0%