ブラジル経済が対内的に悪化しているとするなら、対外的には、千鳥足で穴に足を奪われながら進んでいる状態だ。国際収支赤字が増大していることと、過去3か月で99億ドルの純損失を計上したこと、そして、貿易収支が芳しくないことは、いずれも、充分に考え抜かれた政策というもの(それは外交も含めるのだが)、つまり、問題を先読みして今の段階で手を打つことで未来の繁栄につなげるということが、我が国の政府には見られないことを反映している。ブラジル国民は、この国にとり優れかつ整合性のあるプランが存在しないと受け止めている。政権発足後32か月にわたってこのプランが構築されず、そして、残り16か月にはもはやプランを策定し導入する時間が残されていないという状況の中で、ジルマ大統領の歩みは、まるで、ブラジル人サンバ歌手のゼッカ・パゴジーニョの歌を彷彿とさせる。「オイラは成り行きに身を任せ、成るように生きるのさ」。プランが欠如していること、そして、政府の打つ手が(特定の業界を国の息のかかった大企業に集中させると判断を下したことや、投資を重視するのに時間がかかったこと、不首尾続きの事業入札などが)いずれも失敗に終わっているということは、公然の認識だし、それが、政府に対する財界と投資家の信頼が失われたことや、世界148か国を比較した国際競争力ランキングでブラジルが48位から56位に低下したこと落ち込んだことの、大きな要因になっている。
ここ数日、連邦政府は、対外的な経済状況の悪化が進行していることを裏付ける情報を、いくつか発表してきた。これらを確認してみよう。
2013年の貿易収支は、8月に12億ドルの黒字こそ計上したが、過去18年月で最悪の状態で推移している。驚くような数字だ。2012年1―8月期に131億4,900万ドルの黒字を計上したブラジルだが、2013年にはギアをバックに入れてアクセルを強く踏み込み、同じ期間に38億ドルの赤字を計上した。7月までの時点で、輸出は前年同期比2.16%減、輸入は9.3%増である。商工開発省のダニエル・ゴジーニョ貿易局長は、毎月、信用の失墜した財務省のたわごとを繰り返すのだ。曰く、悪い状況にあるが、改善するだろう。ゴジーニョ局長は石油収支に責任をなすりつけ、しかも、こともあろうに、連邦政府の狼狽ぶりを更に上塗りすることになるのだが、国内の石油生産が拡大することで輸入は縮小すると安請け合いするのだ。ペトロブラスの石油生産が月を追うごとに落ち込んでいることを発表する国家原油庁(ANP)に、この言葉を伝えなければなるまい。
8月には、ブラジルの国際収支は58億5,000万ドルという過去15年で最大の赤字を計上した。国外へのドル送金は企業による対外債務の償還を反映したものだが、ドルの逃避という状況には至っていない。それに、この問題の緩衝材として機能する外貨準備高は、ブラジルの場合、3,700億ドルまで積みあがっている。だが、これがもう2度と起こらない問題だと受け止めるべきではない。3か月前から、ブラジルにはドルが入るよりも出る方が多く、この期間に累積99億ドルを、既に失っているのだ。
そこには、相応の理由がある。アメリカ経済の回復に伴い、連邦準備制度理事会(FRB)は、新興国にドルがあふれる原因となった同国の金融緩和策を撤回すると発表した。この方針に対して、市場は、事前に対応を進めているのだ。こうして、ブラジル国内ではドルが値上がりし、投資家はこれまで新興国の金融商品で運用していた資産を、アメリカと、成長に復帰し始めたその他の成熟経済の国々に振り向けた。その結果、市場は、ドルが枯渇して近い将来、負債の償還状況が悪化するとともに外貨準備高が減少する、と予想している。
それでも、好材料はある。ジルマ政権が、欧州連合(EU)との自由貿易協定に向けた提案の準備を進めていると発表したことだ。この協定では、欧州との貿易で75%をカバーする品目の輸入税率の引き下げにつながる。もし本当に実現を意図するのであれば(これに疑問を持つ声もあるのだ)、ブラジルは、メルコスルの呪縛から自らを解き放ち、単独で交渉する必要がある。アルゼンチンとベネズエラが市場の開放を受け入れるのは、難しいだろう。輸入品に対し、それもブラジル製品までも対象にして輸入税による障壁を設けていることは、この2国が市場を開放するよりも閉鎖しようとしていることの証左である。
ブラジルはこれまでに、BRICS(ブラジルとロシア、インド、中国、南アフリカ)の国々と、メルコスルのトラブルメーカーに縛られることなく国際協定に向けて交渉を進めている。合意への足取りは緩やなのだが、それでも、進んでいるのだ。この経験をもう一度、積んでみようとするだけの価値はある。(2013年9月8日付けエスタード紙)
スエリー・カルダスジャーナリスト、カトリック大学(PUC)教授