こと自国の貿易収支を守るということにかけてアルゼンチン政府は、国際協定をシステマティックに蹂躙することへの良心の呵責など微塵も見せない。
同国では2月1日から、あらゆる製品の輸入に対して輸入許可証の自動発行を停止し、個別に手続きを実施する。税関職員が、何をどれだけ輸入できるかを判断するわけだ。貿易を明確に妨害する目的で検査期間(公式には最大15日)を無駄に確保する官僚的な手法だ。これまで白物家電、(冷蔵庫と洗濯機、オーブンレンジなど)に限られていたが、いよいよエスカレートして繊維製品とシューズ、バッテリー、トラクターといった製品にまで拡大した。
エスタード通信が入手した内部の流出文書に関する報道によると、2012年に100億ドル(前年は109億ドルだった)以上の貿易収支黒字を計上するのがアルゼンチンの最終目標だ。
こうした判断には、アルゼンチンが2001年のデフォルト以来、困難な状況に置かれていること、今年の年明けには深刻な干ばつに伴ってトウモロコシの収穫が少なくとも23%、大豆でも5%の減産の見通しという状況と無関係ではない。輸出関税は、税収の20%を占める(これは今後低下するだろう)。貿易の穴埋めを補填していた資金が減少する中で、輸入に対する支払いを削減して対処しようという考えだ。
二国間貿易の収支においてブラジルが優位にあることは否定できないし、その傾向は、さらに拡大しそうだ。しかしそれは、ネストルとクリスチーナという2つのキルチネル政権が導入した収奪的な経済政策による結果、つまり投資を振興せず技術発展を後押ししないためにアルゼンチンの工業製品の競争力が殺がれたからに他ならない。
すでにブラジル政府は非公式に、国際的な取り決めはおろかメルコスルに対するものとしても、アルゼンチン政府のずさんで無責任な態度に不快感を表明している。例えばフェルナンド・ピメンテル開発商工大臣は、アルゼンチンは「恒久的な問題を抱えている」と、ブラジルの大臣がかつてしたことのないような踏み込んだ発言をしている。
ブラジル貿易会社協会(Abece)のイバン・ラマーリョ会長は、開発商工省事務次官時代の16年間を通じて、アルゼンチンとの貿易摩擦問題に対処してきた。その8年はカルドーゾ政権時代、残り8年はルーラ政権である。同氏によると、この自己中心主義を黙認するとブラジル政府は、保護貿易主義の拡大に向けてアルゼンチン政府の背中を押す決定的な役割を演じることになってしまい、結果として、関係がこじれることになると指摘する。
さらにラマーリョ氏は、政府が反論の糸口とすべき業界はどれかという問題についても言葉を隠さない。「彼らにとって最もセンシティブな業界は、自動車業界だ」。同氏は、ブラジルがアルゼンチンに対して少なくとも同等の措置を講じて車両の事前輸入許可取得を導入すべきだと主張する。
驚くべきことだが数年前からブラジルはアルゼンチンから、二国間貿易において官僚主義的な手続きにより貿易を阻害しているとメルコスル仲裁裁判所に告発されている。
これらは、より統合された関係(関税同盟)を目指そうとする域内加盟国にとっては受け入れられるものではなく、自由な商品の流通を想定する自由貿易圏を形成する以前の話。要するに、メルコスルの条約というのが絵に描いた餅になろうとしている。時とともに失望の色が濃くなっている。
もはや、経済と通商の統合に向けた手段ですらない。そして今、外務省が保全に努めてはいるものの、同様に政治的な統合も崩壊するリスクが生じている。
(2012年1月21日付エスタード紙掲載コラム)