政府は、産業の振興を目指すとともに、為替市場への介入を強化して通貨レアルを弱める判断を下した。レアル安への誘導を今後も継続できるだろうか? 産業を恒久的に振興し続けることができるだろうか? あるいは、これは一時しのぎに終わるのだろうか?
もし資本を十分な水準で強力に規制するというサポートが受けられるなら、中央銀行は、政府が希望する水準に為替相場を誘導することができるだろう。2011年の年明け以降、資本規制の強化が図られ、(比較的)効果的な3つの措置が導入された。第1に、銀行による為替の売りポジションに対して60%の法定準備預金の徴収が導入されたこと。第2に、輸出向け融資に6%の金融操作税(IOF)が導入されたことで、当初は償還期限720日のオペレーションに課税されたが現在は1,080日に拡大されている。第3に、政府は最高1,800日までのボーナス型ローンに対してIOFを課税した。最初のものは、裁定取引をほぼ不可能にする。銀行は、国外でリボ・レートで資金を調達し、為替リスクを負うことなく資金を(「クーポンスワップ」に)投資しており、2010/11年には150億ドル規模が「スワップにより販売」され、これに、外国人投資家の150億ドルの売りポジションが加わった。300億ドルが国内市場に流入した格好で、レアル相場の値上がりを助けたことになる。輸出業者も同様に、「輸出ビジネス」を展開するのに必要とされるよりもはるかに長期の輸出向け融資を濫用している。その当時の「口実」は、巧妙なオペレーション(2008年の「レバレッジの利いたデリバティブ商品」ほどではないものの)によって為替で「過大評価」された部分を取り返すというものであったが、実際のところ、金融取引による利益を見込んだ裁定取引だった。
こうした障壁の導入は為替のスポット市場で中央銀行の買い注文を効果的にし、レアル相場を1ドル=1.90レアル近辺へと値下げした。レアルがオーストラリア・ドルとコロンビア・ペソ、チリ・ペソ、メキシコ・ペソに対しても値下がりをし、資本規制に連動した介入の効果を証明している。
しかしながら、現実の世界はもう少し複雑だ。短期資本への課税は、直接投資と株式市場への投資を制限するのとは大きく異なる。これらは生産活動への投資であり、排除してはならない。しかも同時に、規制の適用によってブロックされた資金の一部を置き換える巧妙な手段として、これらの投資は発生する。つまるところ民間部門は、規制をかいくぐってブラジル市場に資金を投下する新たなルートを見つけ出すぐらいの、大きな才能を持っているのだ。
こうした投資に対して障壁を導入するのは困難なため、レアル安への誘導の継続が阻止されるリスクがあり、政府は新たな保護対策を模索している。
為替市場への介入は全ての業界に等しく影響を与えるため、保護貿易主義以上の包括的な対策と言えよう。というのも保護貿易主義は、ロビーの影響力で一部の業界に対してのみ、製品の国産化比率の引き上げを求めたり、関税障壁を強化あるいは関税を撤廃したりという対策を政府に求めるだけだからだ。そして「ロビー」は、効率化がうまくいっていない業界ほど強く、その活動に対する答えは、方向性も、最善のものではない。この国は、国内産業の近代化を後押しする貿易の自由化が導入されるまでに長い時間を要し、1990年代になってようやくその動きが加速したにすぎない。もし、保護貿易主義への道をたどるとすれば、後ろ向きに大きくステップを踏み出すことになる。
一方で、工業製品の輸入の拡大は不可避だ。これは単純に、2つの属性の結果である。最初は、鉱物資源と農業において比較優位にあるという絶対的な要素。我が国は、これらを輸出し続けるだろう。もう1つは、国内総貯蓄率(公共に民間を加えたもの)が低いという事情による。しかしながら純輸入は、国内貯蓄投資の余剰以外の何物でもなく、しかも、成長を加速させるために引き上げられる投資は、純輸入を拡大させる国内貯蓄と比較して常に大きく伸びる。私たちの国が農産物(もちろん小麦は除くが)の輸入国になることはないため、投資の拡大が工業製品の輸入の増加に弾みをつけることは明白だ。しかし、仮に輸入の拡大が不可避として、ブラジルは何を輸入しようとするだろうか? 農産物と鉱物資源? 違う!輸入するのは、単純に工業製品だ!
何という罰。しかしそれは、私たちを脱工業化に宿命づけるのだろうか? 永遠に一次産品を輸出し、他国の産業発展に対する単なるサポート役であり続けると信じていた1950年代に、戻らねばならないのだろうか? だが、ブラジルに脱工業化の宿命を負わせるような運命論など存在しない。第1に、ブラジルは巨大な国内市場を持つ国だということ。経済スケールの恩恵により工業部門を支えることができ、そのため、より高い競争力をつけるためのあらゆる可能性を備えている。第2に、保護貿易主義を志向する代わりに、純粋かつ単純に、輸出品のコストを引き下げる中間投入財や工業製品のコンポーネントの輸入を拡大、貿易を拡大して生産構造をより効率的にするという、製造業の構造改革という選択肢がある。しかしそのためには、工業部門がさらなる市場開放を実施し、工業製品における国産化比率を引き上げるのではなく引き下げて、輸入された中間投入財とコンポーネントによってコストを削減して輸出を振興することに取り組まなければならない。これは国際的に統合が加速する動きに共存できる特性を身につけるということで、経済的自立国を模索する道ではない。より自由な貿易に向かって歩みを進めるべきで、アルゼンチンが進もうとしている方向に向かうべきではない。
つまるところ、ある国が国内の産業を強化するための財政的手段を既に確保している時、そこで歩みを止めて手をこまねいている理由などないのだ。GDPに対する公債費率は、リセッションでは拡大するが景気が過熱すると反対方向に推移する。そこでその平均的規模にプライマリーバランスの構造的な黒字を計上するというシンプルな考えでスタートし、通貨政策に対する税負担を緩和し、実質金利の低下を容易にし、そして、レアル高に対する圧力を排除する。第2段階として政府は、支出はどのようなものであれ需要を喚起するのでベネフィットだという狭窄なケインズ主義の視点を放棄しなければならない。経常支出を削減する必要があり、それによって貯蓄率が高まり、投資、それもインフラへの投資拡大につながる。不十分なインフラはコストを引き上げ、工業部門の競争力を奪う。国内外を問わず民間資本を刺激してインフラ投資に参加を促すための、安定した業界規定を導入する方向に踏み出すべきだ。それと並行して、消費を刺激するのには最善ながら貯蓄率を引き下げ純輸入を拡大させる、所得の移転にプライオリティーを与えた政策を見直す必要がある。
改革は、税制面では更に重要になる。最初は、地域振興の名の下であろうとICMSを税制優遇政策の手段として使えなくすること。その理由は、貿易をゆがめて効果的な保護に対して混乱した構造を生み出すためだ。「港湾戦争」による大規模プロダクトは、単に経済効率の縮小でしかない。2番目は、発電に対する行き過ぎた課税。例えば水やボーキサイトといった天然資源が豊富な国で、アルミニウムの生産に競争力を確保できないというのは、まことに不思議だ。
繊維工業、そしてその他の電力の利用が極めて大きな業界の競争力は、電力に対する課税率が引き下げられればどうなるだろう。3番目は、いずれの工業国をも上回る課税率が資本財に適用されているような国で、どうすれば固定資産に投資し、技術を導入し、生産効率を確保できるか? 4番目は、給与課税の負担が大きく貿易立国の水準を大きく上回る人件費を抱えた国が、どうやって競争力を確保できるか?
私には、更にどれぐらいの対策があるのか分からない。が、政府の回答については先刻承知だ。つまり政治家たちは、「政治的にこれらはいずれも極めて困難」と答える準備ができている! そうして政府は引き続き、工業分野に飴を与えつつ、為替市場への介入で一時しのぎをしている。その結果、レアルが過大評価されて脱工業化に向かって進んでいるという不満を、私たちはこれからも聞き続けることになる。
アフォンソ・セルソ・パストーレ エコノミストで元中央銀行総裁。エスタード紙への寄稿(2012年5月6日付エスタード紙)。