マクロ経済
昨年1月に実施されたレアル切下げの影響で、昨年前半、ブラジル経済は混乱したが、後半には回復を始め、経済活動は上昇に転じた。本年前半もこの傾向は継続した。
1.財政
IMF(国際通貨基金)救済契約初年度の昨年、ブラジルは財政一次収支(総収支から金利支払を除外したもの)黒字目標を達成した。
本年に入ってからも順調で、1~5月間の連邦、州、市及び政府企業を含めた総合財政一次黒字は219億レアル(GDP比4.66%)と、IMFとの合意 目標162億レアルを達成し、上半期の達成も、ほぼ確実視されるにいたった。5月黒字46億レアルは1991年以来の最良の数字である。
2.対外収支
輸出は1~6月261億ドルと前年同期比16.5%増加した。工業製品輸出好調がその主因である。一次産品輸出はコモディティ価格低調のため伸びなやんだ。
輸出好調にもかかわらず、輸入も1~6月253億ドル、前年同期比9.8%と予想以上の増加となった。従って貿易収支は前年同期の12億ドル赤字から黒字には転じたものの8億ドルにとどまった。
年初にIMFと合意した本年の貿易黒字目標は50億ドルであったが、3月には44億ドル、6月には28億ドルと見直しの上、修正された。
工業活動回復に従って、基礎資材、部品などの中間財や機械設備など資本財輸入が増加傾向にあり、また、下期は農産物端境期になるため、更に貿易収支目標の修正が必要とされることになろう。
貿易収支改善により、1~6月の経常収支赤字は、昨年の124億ドルから本年は114億ドルに減少した。外国企業の直接投資が昨年の139億ドルに対し本年も141億ドルと順調で、経常赤字をカバーしている。
本年度目標は、経常収支赤字230~250億ドルを直接投資260億ドルでカバーすることを見込んでいる。
3.インフレ
政府が公式インフレ率として採用しているIPCAは、本年上期1.64%と20年来の最低となった。
最近の国際石油価格上昇に伴う公共料金引上げ、農産物端境期入りに加え、本年の異常旱魃、寒波による食料価格上昇などにより、下期は生計費上昇で始まったが、突発的要因ない限り後半は下降に転じ、年間では目標の6%以内に収まるものと見られる。
4.金利
中銀は本年に入ってから、3月以降7月まで4回引下げを行いSelic(基礎金利)は年19%から16.5%となった。
昨年3月の年45%以来15回引下げを行い、経済活動の回復をはかった。フラガ中銀総裁は本年中に実質一ケタになる可能性を示唆している。
5.為替
本年初1.80レアル(商業ドル、売レート)からスタートしたドル・レートは、3月1.72まで下落したが、4月、5月米国金利引き上げ、国際石油価格 上昇懸念などにより1.856レアルまで上昇した。6~7月、経済好調と順調な株式市場への外資流入によりドル・レートは下降し、7月末は1.785レア ルとなった。
6.景気動向
IBGE(ブラジル地理統計院)によれば、ブラジル工業生産5月は前年同期比6.1%増加、昨年上期のリセションを脱して10ヵ月連続の増加となった。1~5月では6.6%増加となる。特に耐久消費材、資本財の増加が著しい。
今後の見通しは、金利下降、コントロールされたインフレ、輸出の好調、10月の市長選挙などの要因により、突発的な出来事ない限り、持続的成長が期待される。
CNI(全国工業連盟)は本年の工業生産6%、GDP成長率4%と見ている。
7.経済への阻害要因
海外要因としては、依然として過熱状態を続けている米国経済の動向、特に金利引上げ、及び3月、6月のOPEC(石油輸出国機構)会議で増産を決めたにもかかわらず、依然不安定な国際石油価格の動向などが要注意。
国内要因としては、一次政権時代には50%以上を占めたカルドーゾ政権支持率が13%まで下落、加えて最近発覚した大統領腹心エドワルド・ジョージ前官房長官のスキャンダル容疑の今後の展開などにより、国内政治動向により経済シナリオが左右される可能性が大きい。