部会長 : 田中 信
1.1999年の回顧
1999年は年明け早々の1月13日、為替バンダ(為替変動幅)を従来の1.12~1.22レアルから1.20~1.32レアルに引き上げるとともに、 その中で1週間毎に変更していたミニ・バンダを廃止した。そのためドル相場は前日の1.21レアルから1.32レアルの天床に張りつき激しいドル流出に見 舞われた。
中銀は15日、バンダ制を廃してフローティングに移行した。
当時は、1999年経済動向に対し悲観的観測が支配的であったが、年を終えてみると結果的にブラジルの対応はほぼ成功であったと言うことが出来ると思われる。
(1)切下げによる最も大きなネガティブ効果としては、インフレ昂進で、中には30~50%に達するという見込みも多かった。政府がIMFと合意した目 標は17%であったが、実績は卸売物価のウエイトの高いIGP-DIは20%となった。しかし、政府が採用したインフレーション・ターゲッティング・シス テムで定めた目標はIPCA8%(上下2ポイントのアローアンス)であったが、実績は9%と許容範囲内に留まった。
(2)切下げにより予想されたもう一つの大きな影響は景気の大きな落込みであった。3~4%のマイナス成長という見通しが最も多かったが、実績はトントン乃至は若干のプラスとなった見込みである。
(3)切下げにより最も期待されたのは輸出増加による貿易収支の改善であった。
政府は当初、110億ドル黒字の目標を掲げたが実績は12億ドル赤字で終った。前年98年の65億ドル赤字に比較すれば大幅改善であるが、輸出は前年比6%減で、15%という輸入の大幅落込みにょる貿易収支の改善である。
(4)サービス収支も、支払金利は増加したが、海外旅行、利益送金などの減少により、改善したため、経常収支も98年の336億ドル赤字から、99年は 244億ドルの赤字へと改善した。但し、切下げによるドル建GDPの減少により、経常収支の対GDP比率は98年の4.33%に対し99年は4.39%と ほぼ横這いであった。
(5)外国企業の直接投資は98年の259億ドルから99年は300億ドルに増加し、余裕をもって経常収支赤字をカバーした。
しかし、ブラジル企業の外債返済は98年の336億ドルから99年は519億ドルと大幅に増加、これに対し中長期借入は98年の620億ドルに対し99年は439億ドルと返済額をカバーするに至らなかった。
短期資本も98年の273億ドル程ではないが、99年は60億ドルと依然流出は続いている。
その結果、99年末外貨準備は363億ドルで、IMF関係借入を除くと240億ドルと、最低ラインの203億ドル近くまで落込んだ。
2.2000年見通し
99年は年初の切下げ以来混乱が続き、年央には小康状態となったが、その後インフレ昂進の気配、外債返済のためのドル需要、政治的不安定などの国内要因に加え、米国の利上げ懸念などの海外要因も重なり、10月後半まで企業や市場には悲観色が強かった。
しかし、10月末から11月初めにかけ、ドル相場の落着き、IMFの支援条件である財政一次収支達成見込、ブラジル格付上昇、米国経済のインフレ無き成 長継続確認などにより、一転して楽観ムードに変わった。BOVESPA(サンパウロ株式)指数は98年末の6,784から99年末は17,091と 152%(ドル・ベースでも69%)上昇した。
本年のブラジル経済は、海外要因に大きく左右される可能性が強い。その主なものは、
● 米国経済、特にインフレと金利。
● ロシア大統領選挙やチェチェン紛争に関連する経済動向。
● 原油価格の動向。
などである。
国内要因としては、
● 市長選挙に関連した財政動向、諸改革の国会審議の動向。
● 景気回復に伴うインフレと輸出入の動向
などが考えられる。